「絵は音楽に負ける」のか
音楽がなぜ生まれたのかということを話題にすると必ず、「絵画との比較」をすることになる。
私も上梓予定の書籍の中で音楽と絵画の「違い」を述べることがあるが、あからさまに音楽が優れているという風には表現しない。
それは、そもそも比べるものではないから。
ショパンとピカソ。
どちらが天才か?と言われても答えられないのと同じ。どちらも天才だからだ。
ただ、比較の内容によっては確かに音楽に分があることもある。それは「感情」について。
1月10日の天声人語にこんな記事が載っていた。
「絵は音楽に負ける」
「音楽に涙する人は多けれど、絵で泣いた話はめったに聞かない」
興味深いのは音楽側の人の発言ではなく、昭和洋画壇の重鎮、中村研一氏の言ということ。
耳からの情報は五感の中でも唯一脳幹に直結しており、感情が生まれる古い脳に最も近い。
だから、音楽を聴いて一瞬で引き込まれ、涙することもある。音楽の効用の一つに感情の浄化だと言われるのはそのためだ。
この天声人語の最後はこんな言葉で結ばれている。
「心がうらぶれたときは音楽を聴くな」と。
清岡卓行氏の詩「耳を通じて」だ。無音の恵みこそ良薬なのかもしれないというメッセージがそこにある。
雑音に日々さらされている私たちには「無音」こそが、最高の良薬といえるのかもしれない。
この記事を書いている人
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新潟大学教育学部芸術学科でピアノ演奏と音楽心理学を専攻。音や音楽が人の感情におよぼす影響について研究する。飲食店やオフィスなど商用BGMに関するコンサルティング、ビジネス書、専門誌への寄稿、医療学会での講演、ラジオ、テレビ、雑誌などメディア露出も多数。BGMアドバイザーとして音楽を提供する企業への協力や、個人向けに音楽心理カウンセリング(音で心を整える)をおこなうなどその活動は多岐に渡る。
著書に「心を動かす音の心理学」がある
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