その音楽が「自分のもの」になる瞬間
音楽が「自分のもの」になる瞬間てどんなときだろうと、ふと考えました。
音楽CDを買ったときだろうか。
iPodで飽きるほど聴いたときだろうか。
楽譜を買ってきたときだろうか。
コンサートに行ってライブで聴いたときだろうか。
よく考えて見ると、どれも決して「自分のもの」になった感覚はありません。
ショパンのエチュードのCDを買ったからといって、
「よし、このエチュードは自分のものだ」なんて、とても言えませんし、
ピアニストが弾くエチュードを生で聴いたとしても、もちろん「自分のもの」なんて思えません。
はて、その音楽が自分に入ってくるときってどんなときなのでしょう。
それは、おそらく下手くそでもいいから、自分で演奏したときかなと思います。
200年も前の音楽を今自分の手によって奏でている。
いま、この瞬間に空気を動かして音を出している。
音楽ってやはりその感覚なのだと思います。
つたない演奏であっても、いつでも自分の力で音楽を奏でられるということが、
偉大な作曲家や音楽と一緒になった感覚を増幅させてくれるような気がします。
決して、「ショパンさん、あなたの曲はわたしのものですよ」ということではありませんが、
受動的に鑑賞している段階と、自分の体を使ってその瞬間に音楽を発生させていることは、
一つの壁があるのでしょう。
能動的に音楽と向き合ったとき、今までとは少し違った風景が見えるものです。
大人になって、ピアノやクラリネットを習うことは周りが感じている以上に、本人はすばらしい体験をしているはずです。
生きているうちに、一曲でも多く「自分のもの」にしたいなと思うのでした。
この記事を書いている人
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新潟大学教育学部芸術学科でピアノ演奏と音楽心理学を専攻。音や音楽が人の感情におよぼす影響について研究する。飲食店やオフィスなど商用BGMに関するコンサルティング、ビジネス書、専門誌への寄稿、医療学会での講演、ラジオ、テレビ、雑誌などメディア露出も多数。BGMアドバイザーとして音楽を提供する企業への協力や、個人向けに音楽心理カウンセリング(音で心を整える)をおこなうなどその活動は多岐に渡る。
著書に「心を動かす音の心理学」がある
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