どんな状況でも演奏する準備
演奏会では何が起こるか分かりません。
会場の気温が低くて手が冷たい状態で弾かなくてはいけないかもしれないし、
逆に暑い会場なのに、ジャケットを着たまま弾かなくてはいけないかもしれません。
携帯の音が急に鳴るかもしれないし、子どもの泣き声が聞えるかもしれない。
また、会場まで渋滞していて到着してから一分後に演奏しなくてはいけないかもしれない。
椅子が壊れていて、いつもよりも低い姿勢を余儀なくされるかもしれないし、
衣装に水をこぼしてしまい、別の衣装で登場しなくてはいけないかもしれない。
とまあ、考えるだけでもいろいろな可能性があるのですが、
プロのピアニストはこういったことが起きても大丈夫なように訓練している人も
多いようです。
私も、冬のこの時期に外から帰ってきて、あえてすぐにピアノに向かう。
手がかじかんでいる状態でどのくらいまで弾けるか。
コートを着た状態で弾けるか。
白いピアノで弾けるか。
と、いろいろな状況を意図的に作り出しています。
これは暗譜にも効果があって、いろいろな状況で弾けるようにしておくと
楽譜が頭から飛びづらくなります。
暗譜は非常に繊細なプロセスがあると思います。
普段慣れない方向を演奏中に向いただけで、飛んだり、
ふたをあけた所に手が反射しているのが、つや消しで反射が
ないピアノに向かった途端に飛んだり。
目をつぶって音楽に浸っていたのに、急に鍵盤が気になって手元を見た瞬間に
飛んだり。
暗譜は耳、和声、運動、音楽の構造など様々なアプローチで、
完璧を目指していくのがいいと思います。
という、自分ががんばれという感じですが。
昔はレッスン中に気持ちよく弾いていると、「ハイ、ストップ!」と言われ、
何かと思っていると、「ハイ、そこから再開して」と。
弾けないんですよ、これ。
今日は、近所のグランドピアノ練習室を利用していたのですが、
隣から急にバンドの練習が始まり、ドラムやらエレキギターやらの音が、
大爆音で聞えてきました。
これも、シチュエーションの練習だと思って、弾いていましたが、
ドラムの「ドン、ドン、ドン」には少し気を取られてしまった。
今月メイフェアで弾いているときには、救急車とか通っても大丈夫なように
しておこう。
では。
この記事を書いている人
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新潟大学教育学部芸術学科でピアノ演奏と音楽心理学を専攻。音や音楽が人の感情におよぼす影響について研究する。飲食店やオフィスなど商用BGMに関するコンサルティング、ビジネス書、専門誌への寄稿、医療学会での講演、ラジオ、テレビ、雑誌などメディア露出も多数。BGMアドバイザーとして音楽を提供する企業への協力や、個人向けに音楽心理カウンセリング(音で心を整える)をおこなうなどその活動は多岐に渡る。
著書に「心を動かす音の心理学」がある
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