音楽を聴くとスポーツの能力を上げることができることについての考察
photo © 2005 Oleg Klementiev , Flickr
音楽を聴くと運動能力が上げることについて
一流のスポーツ選手が音楽を取り入れてパフォーマンスを上げることについて研究している専門家専門家Costas Karageorghis氏は、音楽は「アスリートにとって合法的なドーピングのようなもの」と表現しています。合法的なドーピングってなかなか刺激的な表現ですよね。
あるスポーツ心理学の専門誌には「米歌手マドンナや英ロックバンド「クイーン」などの曲をランナーに聴かせたところ、走る距離や時間が伸びた」という記載もあります。別の研究でも、音楽には持久力を向上される力があることがわかったとか。なんと、走行距離が18%も伸びたそうです。
音楽を聴いていると、なんとなくパフォーマンスが上がる気がするわけですが、具体的な役割としては次の2つだと私は考えています。
音楽のリズムやテンポが脳を刺激する
音楽と運動の共通項ってなんだと思いますか?それは、「リズム感やテンポ感」。
リズム感のある曲を聴くと、身体は無意識にそのリズムに合わせて動きます。音楽のテンポが人間の時間間隔をコントロールできることも分かっており、早いテンポの音楽を聴けば身体もそのテンポ感に馴染んでいくのです。
運動を司っているのは、小脳。この小脳は記憶や感情にも影響を与えていると考えられており、音楽とスポーツを結びつける重要な場所であることは間違いなさそうです。
リズム感、テンポ感のある音楽を聴くことで小脳が活性化し、これから実際に身体を動かす運動のパフォーマンスにも大きな影響を与えているのでしょう。
音楽は感情を効果的にコントロールすることができる
2つ目の要素は、感情のコントロールです。普段から運動をしている人ならよく分かると思いますが、「考えすぎる」とたいていは失敗しますよね。
例えば、テニス。
サーブの前に、なにやらいろいろと考えてしまい、「トスは顔の付近で上げるんだよな。それから、手首の内転を意識して、打点は低くならないようにしなきゃ。あ~でも、なんかダブルフォルトしそうかも……」などと頭に浮かんできたときにはほぼ100%ミスる。
スポーツにおいて、この邪念は最大の敵です。
スポーツで最高のパフォーマンスを発揮できる状態を「フロー状態」と呼びますが、この状態は余計なことは考えずに無意識に身体が「いつもの通り」動いています。
人間は、とにかくいろいろなことを考えてしまいますので、「無意識」の状態を作るのは本当に難しい。
現代人は大脳偏重だと言われるのは、こういうところにも悪影響を及ぼしているのです。
大脳に比べて、さきほど出てきた小脳は、言ってしまえば「無意識」を司っているところ。
ピアニストが超複雑な動きを習得し、天文学的な音符の数を記憶し、優雅な顔をしながらさらりと人前で演奏できるのは、この小脳のお陰です。
音楽は人間の邪念を取り払い、無意識に身体が動く状態に持って行ってくれるツールなのです。
リズム感、テンポ感のある音楽は身体の動きを活性化させるとともに、負の感情を取り払ってくれます。
こう考えると、スポーツのパフォーマンスを上げる以外にも音楽は利用できるかもしれませんね。
この記事を書いている人
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新潟大学教育学部芸術学科でピアノ演奏と音楽心理学を専攻。音や音楽が人の感情におよぼす影響について研究する。飲食店やオフィスなど商用BGMに関するコンサルティング、ビジネス書、専門誌への寄稿、医療学会での講演、ラジオ、テレビ、雑誌などメディア露出も多数。BGMアドバイザーとして音楽を提供する企業への協力や、個人向けに音楽心理カウンセリング(音で心を整える)をおこなうなどその活動は多岐に渡る。
著書に「心を動かす音の心理学」がある
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